基本事項の決定

会社の設立 基本事項の決定
目次

株式会社の設立方法

 株式会社を設立するには、募集設立と発起設立という2つの設立方法があります。

募集設立による設立

 募集設立とは、株式会社設立時に発行する株式の一部を発起人(株式会社の設立を企画し、設立に関し責任を持つ人)が引き受け、残りの株式を引き受けてくれる出資者を募る設立方法です。設立にあたり発起人以外に出資者を募るため、出資したのに株式会社が設立されなかったという事があっては困ります。このような事がないように、募集設立の場合は出資者の安全を図る必要があり、そのため設立における手続きは厳格になります。

 株式会社というと、なんとなく募集設立のイメージがありますが、実際には上場企業などの一部の大企業などで行われる設立方法です。

発起設立による設立

 発起設立とは、株式会社設立時に発行する株式の全部を発起人が引き受ける設立方法です。発起人が全ての株式を引き受けますので、募集設立のように保護する必要のある出資者はいませんので手続きは簡単です。また、募集設立の場合は、株式の一部を引き受ける発起人と残りの株式を引き受ける出資者とで最低2人は必要になります。それに対して全ての株式を発起人が引き受ける発起設立であれば1人で設立できますので、個人事業主が法人成りする場合などに利用できます。

 株式会社の設立では、この発起設立で設立される場合がほとんどです。以降では、株式会社を発起設立で設立する場合の手順を説明していきます。

合同会社の設立方法

 合同会社の場合は、株式会社とは違い出資者イコール経営者ですので、募集設立や発起設立などの概念はありません。

基本事項の決定

 株式会社を発起設立で設立するには、まず会社の基本的な事項を決定していきます。

商号(会社名)を決める

 商号とは、株式会社または合同会社の正式な名前です。会社設立手続きのなかで、一番最初にする重要な作業です。会社の商号は何でもよいというわけではなく、法律で決められた事項があります。以下の点に注意しながら検討しましょう。

商号に使用できる文字には制限がある

 会社の商号に使用できる文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字です。会社の商号に使用できる符号は、「&(アンパサンド)」、「’(アポストロフィ)」、「,(コンマ)」、「‐(ハイフン)」、「.(ピリオド)」、「・(中点)」です。符号の使用は区切り文字として使用する場合に限られますので、原則として商号の先頭や末尾には使用できません。(ピリオドのみ末尾に使用することができます。)

会社名には「株式会社」または「合同会社」を入れなければならない

 株式会社の商号には、「○○株式会社」や「〇○合同会社」、「株式会社△△」「合資会社△△」のように、前か後ろに「株式会社」または「合同会社」という文字を入れなければなりません。

他の種類の会社と誤解されるような文字を入れてはいけない

 株式会社なのに商号に「合同会社」または合同会社なのに「株式会社」といった、他の種類の会社と間違うような文字を入れてはいけません。

不正目的で商号を使ってはいけない

 他の会社と間違えられるような商号をつけてはいけません。会社法では、不正な目的での商号使用を制限しています。不正な目的をもって、他の会社と誤解されるおそれのある商号を使用してはいけません。

同一住所に同一商号の会社は登記できない

 同一の住所に同一の商号の会社があると、区別が困難になり混乱を招きます。ですので、同一住所で同一の商号は登記できないことになっています。可能性は低いと思われますが、登記を予定している住所に同一商号の会社が存在しないか確認することが安全です。

事業目的を決める

 事業目的とは、会社の事業内容のことです。会社は事業目的の範囲内で事業しなければなりませんし、定款には必ず定めなければならない事項ですので、このタイミングで以下の点に注意しながら検討していきます。

会社は、目的の範囲内でしか事業を展開できない

 会社は、目的の範囲内で事業を展開します。目的の範囲外の行為は無効となる可能性があります。事業目的には、現在の事業だけではなく将来行うつもりがある事業も入れておくと、後々の費用や時間が節約できます。ただ、あまりにも目的が多くなり過ぎても、その会社が何の事業をしている会社なのか分かりづらくなり、融資の際に不利になる場合もありますのである程度絞る必要があります。

 許認可が必要な事業を行う場合は、目的にその事業に関する一定の事項が規定されている必要があります。

会社には営利性・適法性が必要

 株式会社は、営利を目的とした社団法人ですので、利益を追求し社員(株主)に分配することを目的にする必要があります。ですので営利性の無い事業目的は定めることができません。 また、法律に触れたりするようなことも目的にはできません。例えば、「窃盗業務」や弁護士でないのに「弁護士業務」などということです。

本店所在地を決める

 本店所在地は、会社本社の場所のことです。定款に絶対に定めなければならない事項で、定めがないと定款が無効になります。

定款に記載する本店所在地は、2通りの記載の仕方がある

 定款に記載する本店所在地には2通りの記載の仕方があります。1つ目は、「本店を千葉県千葉市中央区に置く」というように市町村等まで記載する方法です。2つ目は、「本店を千葉県千葉市中央区○○丁目△番地□号に置く」というように具体的に所在場所を特定して記載する方法です。

 会社の移転を考えた場合、前者の場合では同じ中央区内であれば定款の変更が必要ありません。それに対して後者の場合は、定款の変更と登記が必要になりますので面倒です。ただし、前者の場合は、設立登記までに本店所在地の具体的な所在を定めて、発起人議事録を作成しなければならないという手間はあります。

資本金の額を決める

 資本金の額も定款に定める必要がありますので、適正な額を検討しましょう。

資本金が少なすぎると信用に欠ける

 2006年に会社法が改正され、資本金1円で会社が設立できるようになりました。しかし、資本金は会社規模を表すひとつの目安になりますし、信用に関わってきますので、意味も無くあまりにも資本金を低く設定することは止めた方がよいかと思います。具体的には100万円~300万円以上あった方がよいかと思いますが、設立時の開業資金や設立後の運転資金を考えて、資本金を決めることが大切になります。

事業年度を決める

 個人事業とは異なり会社の場合は、決算月を自由に決めることができます。

こだわりがなければ初回の決算期までは長くした方がよい

 会社の場合は、決算月を自由に決められますので、特にこだわりが無いようでしたら会社設立の月から一番遠い月を決算月としておいた方がよいかと思います。初年度の事業期間を長く取れれば、設立後すぐに決算の準備をしなくてはならないなんていうことになりませんし、消費税の免税措置を最大限に活かすことができます。

 設立予定日(登記申請した日)も考慮しつつ、一番有利な月を選択してください。

  • 株式会社の設立には募集設立と発起設立の2つがある。
  • 合同会社は経営者が出資者になる。
  • 会社を設立する場合は、まず基本事項の決定しましょう。
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